マスターカードの銀行ネットワークVocaLink買収はP2Pへの参入、フィンテック
マスターカードが920百万ドルで英国銀行業界(Barclays Bank, Royal Bank of Scotland, Lloyds and HSBCなど18銀行参加)から買収したVocaLinkです。(株式92.4 per cent 取得、残りの株式7.6%は少なくとも3年間銀行コンソーシアムが保有)110億取引と英国決済の半分以上を抑えています。そもそも英国銀行業界には英国政府や欧州政府からクリアリングサービスのVocaLinkをオープン化し、銀行業界の外に売却せよと圧力がかかっていました。VocaLinkの機能は以下の通りです。現在、規制当局の審査待ちです。
- BACS – the Automated Clearing House (ACH) enabling direct credit and direct debit payments between bank accounts
- Faster Payments – the real-time account-to-account service enabling payments via mobile, internet and telephone
- LINK – the UK ATM network
さて英国を含む欧州の当局は、フィンテックを促進する為、銀行業界の内部に閉じたサービスを一種の民営化(外部化)によりオープン化しようとしています。また決済や送金サービスは日本と異なり(銀行法と資金決済法)、銀行法の下、サーバー型電子マネーサービス(為替取引や前払い式支払い手段)は超ナロウバンキングとして育成されています。
ではVocaLinkを買収したマスターカードの狙いは何でしょうか。フォーチュン誌はカード業界のP2M(決済)からP2Pへのフィンテックビジネス拡大だとみています。実際、マスターカードはそういう方向を追及すると明言しています。記事はVenmo(ペイパルが買収した米国のP2Pサービス)のようなサービスに注力すると書いています。
マスターカードの市場占有率は英国では5%であり、バークレイカードなど圧倒的にVISAカードが強い市場です。
マスターカードのペイパス・ウオレットが英国で超ナロウバンキング(アプリバンキング)のライセンスを取得すれば、VocaLink(銀行決済網)を通してペイパス・ウオレット間の送金だけではなく、銀行口座への直接送金などが可能になります。またペイパルなどとの提携交渉も有利になります。ペイパルが英国で超ナロウバンキング(アプリバンキング)のライセンスを取得すれば、マスターカードが運営するVocaLink(銀行決済網)に参加することになるでしょう。こうして英国では様々なサーバー型電子マネーが銀行ネットワーク=VocaLinkに直接参加できる環境=オープンな環境が整い始めています。
重要な点はSweden, Singapore, Thailand and the United StatesにおいてVocaLinkが銀行ネットワークにサービスを提供している点です。その主役がマスターカードになるわけですから、当然、それぞれの地域で銀行ネットワークのオープン化が進みます。
<所感>
アリペイもペイパルもVocaLinkに参加すれば、銀行を経由しなくてもアリペイ個人アカウントからペイパル個人アカウントに送金できますね。
<出所 >
★★ Why Mastercard Bought VocaLink for $920 Million
★★ Mastercard buys payments processor Vocalink
日本ナレッジマネジメント学会 専務理事 山崎秀夫 borg7of9 twtter