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グーグルのオープンソーシャル(opensocial)戦略の急速浸透と焦るMIXI


 2007年11月1日にグーグルが発表した複数のSNSとウィジェットなど他社がSNSの上に構築するシステムやソフトウエアとのAPIの共通化、即ち「オープンソーシャル戦略」が急速に広がりを見せています。一体、その背景には何があるのでしょうか。
MySpace, Friendster, hi5, imeem, LinkedIn, Ning, Oracle, orkut, Plaxo, Salesforce.com, Six Apartなどがグーグルの「オープンソーシャル戦略」に賛同の意を表明しています。
関連記事は以下の通りです。
▼The web is better when it’s social
http://code.google.com/apis/opensocial/
▼グローバルSNSは実現するか?
http://blogs.itmedia.co.jp/speedfeed/2007/11/snsgoogle_opens_276c.html?ref=atom
▼Googleの“OpenSocial”の全貌が明らかに
http://zen.seesaa.net/article/64063285.html
 確かにSNSとその上に構築されるシステムとの間のインターフェースが共通化、標準化されれば、SNSを社会環境基盤と考えた場合、その上でのサービス開発は飛躍的に進みます。そしてこれに先鞭をつけたのはグーグルがマイクロソフトとの投資競争に負けたフェースブックでした。でも今回のグーグル戦略はもっと高い観点から考えられています。
● 「雑煮文化のSNS」、オープンソーシャルは自然な方向
SNSをインターネット上の仕組みの視点から見た場合、SNSにとってオープンソーシャルは自然な方向であることは間違いありません。
何故なら仕組みとしてのSNSとは「共通点がプロフィールと紹介文と知人の輪」位しかなく、その中にいわば「雑煮」としてブログや動画、携帯電話インターフェース、フォーラムなどが取り込まれてきた歴史があります。そしてその勢いが現在、ゲームやアバター、仮想社会サービスにまで及び始めています。GREEやモバゲータウンなどを見ればお分かりですよね。これはSNSの運営企業が主導的に取り込んだ「雑煮の具」のようなものでした。かつてオランダのあるSNSはグリーティングカード・サービスまで取り込んでいました。従ってオープンソーシャルのような業界共通のAPIを作れば色々な意味で効率化効果があがることは明らかですね。GREEが取り込んだアバターサービスもモバゲータウンが取り込んだアバターサービスもAPIが同じとなれば、社会全体で見た効率は明らかに上がります。だって二度手間が防げるわけですから。
●フェースブックがオープン化に火をつけた
 しかし各SNS運営企業は、広告費などを巡ってライバル関係にあるため、そうは問屋が下ろしませんでした。
それを米国のフェースブックが先に進めた訳です。まずフェースブックはオープン化に踏み切りました。即ち自社のSNSサービスを社会基盤としてその上で他の企業がウイジェットと呼ばれる付随ソフトウエアを自由に作り上げ「広告やビジネス」を原則、自由に行って構わないとした訳です。その結果、フェースブックの参加者は一挙に増え、5000万人程まで急速に増加しました。またウイジェットと呼ばれる付随ソフトウエアの数は既に7000を超え早晩、1万に近く勢いです。それを参加者は自由に自分自身のプロフィールに張り付ける自由を持っています。SNSトップのマイスペースは真っ青になりました。
判り易く言えば「雑煮を持ち込む自由」をSNSの外部のインターネットサービス企業に与え(オープン化)、どれを使うかの選択の自由を参加者に提供した訳です。
これはセカンドライフのリンデンリサーチ社が行った参加者による著作物の権利を認め、売買の自由を与えたのと同じ戦略ですね。
●グーグルはそれに標準化を追加した
 一方web2.0の主流派であるグーグルは、SNSなどのコミュニティ(ソーシャルサーチ)の領域に弱く、同社のSNSオーカットなどもパッとしない状況にありました。またマイスペースの内部検索サービスには競り勝ったものの、フェースブックの僅かな株式の争奪戦ではマイクロソフトに負けてしまいました。
 またSNSなどの閉じたサービスはグーグルの検索の対象から外れ気味と言う問題もあります。そこでグーグルはフェースブックがマイスペースを追撃して、SNSをオープン化し、参加者の数やトラフィック量を増やし、インターネットにシフトする広告ビジネスなどで外部の業者と収益を分かち合うWIN-WINの関係を作り始め、効果を上げたのを見てそれに加えて一挙にSNSの業界標準化をしかけました。
 フェースブック・・・SNSの自社APIを公開し、外部業者が自由にサービスを付加できるオープン化戦略を採用
 グーグル・・・・業界標準のAPIを目指し、オープン化+標準化戦略を促進
●仮想社会サービスの発展
 それでは何故マイスペースやオラクルなどを含むLinkedInなどのSNS業界の主流がグーグルの話に早速、乗ったのでしょうか。もの凄いスピードでグーグルの案は業界を超えて多くのIT企業に受け入れられました。スピードがあまりに早いです。
その背景には仮想社会サービス(3Dインターネット)の標準化の動きの影響があります。
次世代のインターネットサービスである仮想社会サービス(3Dインターネット)はWSDコンソーシアムなどが18か月以内に標準化の案を出す動きを開始しています。そして重要な点は、グーグルが仮想社会サービス(3Dインターネット)に進出し、対応を考えている事が明白となった時点でIBMなどがセカンドライフやソニー、フィリプスなどを含む20社を超える企業で標準化、オープン化の協議会を結成し動き出しているという点でしょう。
グーグルは仮想社会サービスと同じ視点でSNSの標準化、オープン化を考えていると言えます。
●そもそもソーシャルネットワークとは
 そもそもソーシャルネットワークとは、社会学の用語です。従って本的に社会環境の視点が重要であり、欧米では社会環境の視点がIT環境の仕組みの視点と同等に議論されています。対面であれ、いわゆるSNSのような2Dであれ、仮想社会サービスのような3Dであれ、人脈形成によるコミュニティ形成の視点がまず重要だという訳です。そしてその為のプラットフォームをどのように組み合わせるのかという議論に進みます。
我が国でSNSという場合、実務者のほとんどはIT環境、ITの仕組みの視点しかもちわせていませんでした。一方グーグルのような欧米企業は、流石に社会環境の視点もしっかり持って両者の統一的な戦略を出してきています。
●焦るMIXI、標準化は進めるがオープン化は積極的にやらない!!
では国内のSNSはどうでしょうか。
▼『mixi』、SNS情報参照の共通規格「OpenSocial」への賛同を表明
http://mixi.co.jp/press/press_071102.html
既に上場企業であるMIXIは「何もしないと株価に影響する」と考えたのでしょうか、11月2日付けでプレスリリースを発表しています。
引用

「OpenSocial」は各SNSが保有する基本的な情報へのアクセス手段(以下、「Web API」)を標準化することで、SNSの情報を活用するソフトウェアの汎用性や移植性の向上を目指した規格で、各SNSがプロフィール情報およびリンク情報、また新着情報のWeb APIを同一の仕様で提供することを期待しています。
*これらのWeb APIはユーザーの同意に基づいて動作するもので、『mixi』外部から無制限にアクセスを許可するものではありません。
今後『mixi』は「mixiツールバー」などで現在稼働中の自社のWeb APIを、上記の「OpenSocial」仕様に調整して順次公開する予定です。
・・・・中略
当社は今後も、標準技術を用いた『mixi』の外へのWeb API提供にとどまらず、サードパーティがアプリケーションを『mixi』の中で自由に構築・運営できるようなプラットフォームを築いていきたいと考えております。

引用終わり
 わかり易く言えば「標準化には賛同」するものの「オープン化」にはあまり前向きではないよと言っているように聞こえます。MIXIはフェースブックのようにソーシャルプラットフォームになるつもりはなく、飽くまでも今後MIXIが主体的に追加するサービスにAPIのグーグル標準を採用すると言っているだけです。(同社と組める相手のサービスは自由な構築と運営の権利を与えるのでしょうが・・)
 米国のように日本にもフェースブックに相当する強敵企業が登場すれば別ですが、現在はこういう姿勢かなと思われます。
 確かにMIXIのような広告中心で成功しているSNS事業者にとっては、フェースブックのように外部のサービスに自社のプラットフォームを開放すれば、これまで「独り占め」してきた広告費の一部を他社に取られてしまう可能性が短期的には高まりますから、戦略としてはありえますね。
これはGREEなど他のSNS事業者にとっては大きなチャンスですね。
2006年携帯電話の番号ポータビリティの導入の結果、3Dサービスなどのパケット代が固定制になり、その結果、SNSへの携帯電話からのアクセスが爆発的に伸びました。その結果、モバゲータウンが大成功し、GREEが息を吹き返し広告費のかなりの部分を取り込みました。MIXIの場合にも携帯電話からのアクセスが一説には半分近くなってると言う話もあります。
今回のグーグルのオープンソーシャルも同じような事態を巻き起こし、我が国でもSNS業界の地図が塗り替えられる可能性も高まってきました。
面白くなってきました。ワクワクしますね。
日本ナレッジマネジメント学会 専務理事 山崎秀夫

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