2007年07月15日

●大手金融機関の事例等が実証した柔らかな内部統制に有効なSNS

 2008年4月から日本でも金融商品取引法に基づく本番運用が求められる組織の内部統制(俗に言うJ-SOX対応)ですが、その中で損害保険会社等大手金融機関でもSNSが有効なことが実証され始めています。これまでの文書化を中心とした「硬いアプローチ」と比較してSNSによる「柔らかい内部統制アプローチ」は一体、何が異なるのでしょうか。


▼【インタビュー】営業所ごとのノウハウを素早く共有――社内SNS事例(5) (損保ジャパンの事例)

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20070704/276785/?ST=pc_news

▼社内ネットコミュニティ「社員いきいきコミュニティ」の開設
~ 自らが考えて行動する社員づくりを目指して ~

http://www.sompo-japan.co.jp/topics/200707031600.html

▼株式会社損保ジャパン、マーブル戦略で複数のSNSを用いたハイブリット型SNSを運用

http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000000198.html

引用

現在の対象社員数は約2000人程度と規模は大きくないが「社員いきいきコミュニティ」などでは参加者が自宅からアクセスし、内容は業務に限定しない日記やコミュニティ、業務のQ&A、ファシリテーターの設置、ハンドルネームの活用などによりドラマ効果による共感や波動が伝わりやすい会話環境作りを行った。また完全匿名コミュニティも設置し、現場の問題点の浮上を抑制してしまうビッグブラザー現象の対策にも配慮を行った。

現在社内浸透の過程であるが現場では非常に活発に活用されている。そして業務改善計画の実施においても部署慣行ルールなど遵法意識の麻痺現象への是正効果など、既に数々のリスク管理上のプラス効果が見られ始めている。今後は参加者を次第に増加させ08年3月末までに約3000人を超える参加者数を実現する予定である。

引用終わり

▼ 損保ジャパン、複数の SNS を用いたハイブリット型 SNS を運用
 http://japan.internet.com/busnews/20070709/3.html


詳細は各記事やプレスリリースを見て頂くとして、登場人物は損保ジャパンの他にコンサルを請け負った野村総研、システムはBeat Communicationが登場します。アプローチは社内に複数のSNSを立ち上げるマーブル戦略(マーブルチョコレートのような多くの小さなコミュニティ戦略)を取っています。これは色々なSNSの実証実験をしたと言う意味です。

同社の取り組みはホームページには実名を書き、お互いの交流はニックネームの利用と完全匿名コミュニティの活用などを上手く組み合わせて実施しています。

それでは何故社内ブログや社内SNSの神話になった感のある「単純な実名原理主義」のアプローチを取らなかったのでしょうか。

組織内のSNSやブログはインターネット上のSNSやブログとは社会環境が大きく異なります。


組織内のSNSには職位職階による「社員の自己開示の抑圧」と言うビッグブラザー効果が存在すると言う点の十分な理解が必要となります。ビッグブラザー効果とは「物言えば唇寒し」と言う「伝統企業では当たり前」の企業風土の意味です。

またニックネームによるやりとりは「組織を背負った発言」では無く「個人としての居酒屋的な発言」と言う意味合いを保証します。


それでは一体、金融商品取引法上の内部統制上のどの領域にSNSは効果的なのでしょうか。ここから以下は特定企業の事例に囚われない筆者個人の一般論としてお読み下さい。

まず以下の記事は多少古いものですがSNSと内部統制を考える上でご参考までに。


▼ネット・コミュニティーを活用したITによる柔らかな内部統制の確立
 http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0605/24/news01.html

▼社内ブログ/SNSと2ちゃんねる投稿の不思議な相関関係
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/0701/31/news01.html

 確かに最近、盛んに社内SNSの講演会を実施されている大手ソフトウエア企業さんは、あるセミナーの中で「SNS効果の一つとして2チャンネルへの社員書き込みが減った」と明言されていました。


内部統制(J-SOX)の基本的仕組みを大雑把に要約すれば以下のポイントに集約されます。

▼ 内部統制の四つの目的 (企業会計審議会の各種報告より)
1、 業務の有効性及び効率性
2、 財務報告の信頼性
3、 事業活動に関わる法令等の遵守
4、 資産の保全


▼ 6つの基本要素
1、 統制環境
2、 リスクの評価と対応
3、 統制活動
4、 情報と伝達
5、 モニタリング
6、 ITへの対応


 基本的なJ-SOXへの対応とは膨大なリスクの伴う手続きの文書化と言う気の遠くなるようなテストの連続と説明されています。

● 統制環境と言う組織の気風をどう変えるのか?

 しかし、この手法で対応できない点が「統制環境」の求める経営者の姿勢を支える、不祥事を起こさない為の誠実性や倫理観の確立でした。SNSの活用はこれを「縦型組織を超えたネットと対面での横や斜めのコミュニュケーションの導入」により、「創発規範を醸成」し、ネット発で社員の倫理観、誠実性を引き出し、組織風土を変えて行こうと言う試みで有効です。そのヒントは欧米のWeb2.0で議論されているソーシャルメディアによるコモンズ(村の共有地)作りにあります。

ステルスマーケティングにあれだけ反発を示す大衆表現社会の優れた文化的側面を企業内にも導入し、世間を色々騒がせた不祥事=「不誠実な対応や社会倫理に反する恐れのある行為」を現場組織や社員が自然に抑制するような組織風土を獲得するという試みですね。

まあ、言うは易く行うは難しい訳ですが。実際やってみれば判ります。決してそんなに簡単では有りません。


● 情報と伝達

 「経営者がバッドニュースを知らないのは重要な内部統制上の欠陥である」と企業会計審議会の各種報告は言っています。現場で悩む社員のために電話のホットラインなど作っても、不祥事などに繋がりかねない「現場のバッドニュース」は中々上がって来ません。

そこでSNSを活用した感情の共有を下敷きとしたネット上の議論が有効となります。これは完全匿名で行うのが自然でしょう。2チャンネルの優れた点を導入する訳ですね。しかし同時に背景には、SNSが培った現場社員同士の感情の共有が厳然として存在します。

凡そどこの企業の社内SNSでも議論になりますが「2チャンネルへの社員の書き込みは、一種の逸脱行動(若気の至り)であり、同じ社員が「mixiでは思いやりのある人になる」場合も多いです。


そう言った社員の現場の問題意識、問題点を如何にスムースに浮上させて経営改革や業務改革に繋げるかが、SNSが有効に機能する役割の一つです。

これに成功すると本当に凄いことが実際に起きます。


● リスクの評価と対応

 それにより不祥事回避などに代表されるリスク管理が出来る訳ですね。


● 終わりに

 社内ブログやSNSの導入はベンチャー企業の組織風土ならば兎も角、伝統ある企業では相当な工夫をしてファシリテーターをしっかりおかないと成功は難しいと言うのが実情です。しかし経営者が本気になり、社員が本気になれば出来ない事はありません。


社内SNSに取り組み、社内ブログに本気で取り組んでいる皆さん、共にがんばりましょう。

 日本ナレッジマネジメント学会 専務理事 山崎秀夫

Posted by sns at 2007年07月15日 12:19
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